鼠径ヘルニアの手術後、運動や性生活について

鼠径ヘルニアの手術後、運動や性生活について Inguinal Hernia

昨今、鼠径ヘルニアの手術は日帰りで行うことが可能です。なお、患者様の中には、運動、入浴、食事、お仕事の再開など、ご自宅に帰ってからの日常生活が不安という方もいらっしゃると思います。当院では、鼠径ヘルニアの手術はもちろん、患者様が日常生活に復帰するまでのフォローも丁寧に行います。以下では、なかなか人に話しづらいことも含め分かりやすく解説しておりますので、受診前にご確認頂き、術後のお悩み解消の一助となれば嬉しく思います。

鼠径ヘルニアの手術後、帰宅してから

鼠径ヘルニアの手術後は、5~10分ほどで覚醒します。全身麻酔から目が覚めても、鎮痛剤や局所麻酔の効果は残っているため、耐えられないくらい激しい痛みが生じることは滅多にありません。術後は1~2時間ほどリカバリールームでお休み頂き、ご自身で歩いて帰宅することが可能です。帰宅前にトイレに行けるかをチェックし、水分補給をしてから、医師の診察を受けて問題ない場合、ご帰宅が可能です。術後5日分の鎮痛剤を処方しますので、近隣の薬局で受け取りをお願いいたします。

手術当日の就寝まで

ご帰宅後の食事や日常生活はいつも通りで構いません。なお、患者様ご自身で車を運転することや飲酒は避けてください。手術当日の入浴は創部の保護シートをつけたままシャワー浴であれば可能ですが、バスタブに浸かるのは翌日からとしてください。翌日以降は創部の保護シートをはがして優しく洗ってください。

手術で使った局所麻酔の効果は、術後1~2時間ほどで効果がなくなります。当院から処方する鎮痛剤は忘れずに飲んでください。激しい痛みがあれば、我慢せず頓服薬を服用してください。痛みの程度は患者様によって異なりますので、痛みが強い場合はお薬を飲んで頂き、無理は禁物です。

症状や痛みに関して心配なことがあれば、遠慮なく当院までご連絡ください。

翌日の仕事や家事について

いつも通りの日常生活を送って頂き、お仕事の再開や車の運転も問題ございません。なお、腹部に力が加わる動作(サイクリング、乗馬、サーフィン、ゴルフ、ウェイトリフティングなどの筋力トレーニング、長距離走などの過度な運動、重いものを持ち上げるなど)や身体に負担が大きい運動は、鼠径ヘルニアの再発を防ぐために術後2週間は避けてください。お仕事でこのような動作をしなければならない場合は、特に注意が必要です。勤務内容を相談するため職場に診断書を提出しなければならないなどの事情があれば、当院で診断書を作成することも可能ですので、お気軽にご相談ください。

手術後3日~1週間の過ごし方

術後2日目以降は湯船に浸かることもできます。術後3日ほどで痛みがほとんど無くなる方も少なくありません。臍部の傷口に貼ってある透明なテープは、手術2日目に患者様ご自身で剥がしてください。入浴の際は、毎日傷口をやさしく洗ってください。

5日分の鎮痛剤(定期内服薬と頓服薬)を処方しますので、痛みが気になる時など必要に応じてお飲みください。痛みの程度は人によって異なるため、痛みが無ければ使用する必要はありません。なお。起き上がる時、排便でいきむ時、大きなくしゃみや咳をする時などは痛みが起こりやすいため、注意が必要です。そのような動作によって痛みが生じないか心配な方は、前もって鎮痛剤を飲んでおけば痛みが軽減されます。喫煙に制限は入りませんが、術後に痰や咳が多くなって痛みが生じることに繋がる場合があります。

術後7日目に経過観察のために診察を実施します。今後は、遠方の方やお忙しく来院が困難な方のために、特段気になる症状が無ければオンライン診察を取り入れる予定です。

鼠径ヘルニアの手術後の運動や性生活について

術後2週間経てば、腹部に力が加わる動作や運動も問題なく行えるようになります。

激しい運動は2週間程度控えましょう

腹部に力が加わる日常の動作やお仕事、激しい運動は、術後2週間経つまでは避けてください。

ウォーキングや散歩程度であれば構いませんが、水泳やランニングなどは「激しい運動」に該当しますので控えてください。また、ウェイトリフティングだけでなく、腹筋や腕立て伏せなど自重を使った運動もお腹に力が加わるため、術後2週間経つまでは控えてください。

術後2週間経てば激しい運動も問題なく行えるようになります。運動について分からないことがあれば、遠慮なくご相談ください。

性行為の再開時期と注意事項

腹部に力が加わることで、性行為中に痛みが生じる恐れがありますので、術後2週間経つまでは性行為も避けてください。

また、「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン 2015」では、鼠径ヘルニアの患者様の2.4~23.2%が、射精障害などの性機能障害や性行為中の鼠径部の痛みを訴えますが、術後は1.0~6.0%まで減るというデータがあるため、鼠径ヘルニア手術によって、射精障害などの性機能障害や性行為中の鼠径部の痛みが解消すると報告されています。一方で、手術前は性行為中に痛みを感じなかった2.3%の方で、術後の性行為で射精時に中等度から重度の痛みが生じたというデータもあります。これは、手術部位付近のわずかな神経の損傷によって引き起こされる長引く痛みや、繊維化による精管の巻き込みによって起こる痛みだとされています。

メッシュを入れることによる不妊や精巣機能への影響に関しては、LH、FSH、血清テストステロン・レベルへの影響は想定されますが、血流や精巣容積に対してはメッシュを使っても大きな支障は無いと考えられています。また、メッシュの配置位置(前方、後方)によって精巣の血流に支障をきたすこともなく、精子形成機能に大きな差は生じません。そのため、メッシュを使うことで男性不妊が起こるかどうかについては、両側手術の場合は多少確率が上がりますが、問題ない程度と考えられています。

鼠径ヘルニア手術後のよくある質問

その他、鼠径ヘルニア手術後、特に運動についての質問に回答いたします。以下でご説明する内容以外でも、ご不明点があれば予約時・診察時・術後などいつでも遠慮なくご相談ください。

筋トレをしても大丈夫ですか?また、筋トレによって再発を防げますか?

腹部に力が加わる筋トレは、術後2週間は避けてください。また、筋トレによって鼠径ヘルニアの再発を防ぐことはできません。腹部に力が加わることで鼠径ヘルニアの重症化に繋がりますので、日常生活においては、立ちっぱなしの作業や重いものを持ち上げる作業をなるべくしないようにしてください。

飲酒はどれくらいの期間控えれば良いですか?

手術当日の飲酒は避けてください。入浴や飲酒によって血流が促されるため、内出血や痛みが生じやすくなります。なお、入浴は、手術当日はシャワー浴のみで、翌日からは湯船に浸かることもできます。

立ち仕事は控えた方が良いでしょうか?

立ち仕事によって鼠径部に負荷がかからないか不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、術後は普段通り立ち仕事をしても構いません。

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