鼠径ヘルニア手術の全身麻酔は安全?
リスクが全くない麻酔はありません。
麻酔は必要がある場合に限り実施する医療行為ですが、麻酔科の専門医が実施する全身麻酔はリスクが低いとされています。
海外の過去のデータによると、全身状態に問題がない待機手術では、麻酔科専門医が行う全身麻酔によって死亡するリスクは極めて低いと言われています。具体的には、600万分の1という確率であり、搭乗した飛行機が墜落して死亡する確率よりも低い数字です。そのため、飛行機を安全性が高い乗り物と考えるなら、全身麻酔も同じく安全性が高いと考えられます。
日本では日本麻酔科学会がデータを集めており、年齢に関係なく手術で亡くなる方のほとんどは、麻酔ではなく手術中の予期せぬインシデントと術前合併症が原因とされています。例えば、手術による出血や、手術前から起こっていた呼吸器や心臓の病気などがよくある原因です。こうしたリスク要因は、麻酔科専門医を交えた詳細な術前診察によって減らすことができます。
そのため、病気を持っている方には、場合によっては日帰り手術をご案内できないことがあり、その際は最適な医療機関にお繋ぎします。なお、きちんと治療を受けて病状が安定している場合は、リスクの小さい日帰り手術をご案内できることがほとんどです。
手術中の出血などの緊急事態については、昇圧剤の使用や輸液管理など、麻酔科専門医が適切に対応することで、安心安全な手術となります。手術担当医は止血処置に集中しますが、麻酔科専門医が患者様の全身状態をリアルタイムで確認し、その都度最適な処置を行います。術前の問診や検査を注意深く行い、手術中も常に患者様の状態を確認することで、安心安全な手術を実現します。また、不測の事態に備えて万全な対策をすることで、スピーディーに最適な処置を行えるようにしております。
日帰り手術で行う麻酔について
入院・日帰りにかかわらず、鼠径ヘルニアの手術内容に大きな違いはありませんが、麻酔の方法には違いがあります。
選択する麻酔の方法によって、術後の回復スピードが大きく異なります。
入院手術では、気道にチューブを挿入するような深い全身麻酔や脊椎麻酔(背中から針を刺す下半身麻酔)で実施することがほとんどで、侵襲が大きいです。
また、術後の食事制限や、麻酔の副作用で排尿が難しくなり、尿道にカテーテルを挿入する場合もあります。その場合、麻酔薬の副作用が消えるまでいつも通りの日常生活を送ることは難しいため、入院して頂かなければなりません。
特に脊椎麻酔では、術後に排尿困難や頭痛などが起こり、手術の痛みよりも大変だったというお声を頂くこともあります。深い麻酔によって手術を進めやすくなりますが、患者様の苦痛が増えるというデメリットがあります。
鼠径ヘルニア手術では、そこまで強い麻酔でなくても進められることがほとんどですので、当院では必要以上に麻酔を使わないように配慮しております。
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